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正平調
2011/05/10
大量の黄金を産出し、宮殿も民家も黄金でできている。中国の東の海に浮かぶ幻の国「ジパング」について、マルコ・ポーロの旅行記「東方見聞録」はそう記している◆ジパングとは日本のことだ。モンゴル帝国が支配するユーラシア大陸を旅したイタリア商人のマルコは、はるばる中国まで足を延ばし、こんな話を聞いたらしい。それ以来、日本を「黄金の国」とする伝説が欧州に広がったとされる◆当時、日本は鎌倉時代である。小さな島国のどこに黄金の「宮殿」があったのか。それは京の都でも鎌倉でもない。「みちのく」と呼ばれた東北地方の平泉にある中尊寺の金色堂のことだという◆東北はかつて金の大産地だった。大陸とも交易し、独自の経済や文化が栄えた。平泉は東北の覇者、奥州藤原氏の拠点で、中尊寺は「平泉を仏の国に」という藤原氏の意向で築かれた。仏堂の金色堂は全体が金箔(きんぱく)で覆われ、今も見る人を圧倒する◆その金色堂を含む寺院など平泉の文化遺産が、世界遺産に登録される見通しとなった。東日本大震災では大きな被害を免れたが、平泉地区の連休中の観光客は昨年より8割も減った。ようやく明かりがともった気分ではないか◆「五月雨の降(ふり)のこしてや光堂(ひかりどう)」。金色堂を訪ねた芭蕉がこんな句を残している。東北の栄華の歴史が見直されれば、復興の励みになろう。被災地の人々が抱く未来への希望の光が、きらきらと輝きだす。

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