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http://mainichi.jp/select/opinion/eye/news/20110510k0000m070161000c.html

記者の目:情報発信には責任の自覚を=日下部聡(社会部)
 東日本大震災では「情報」の在り方についても、さまざまに考えさせられた。新しい情報伝達手段となったツイッターは、救助要請や安否確認などの際に有効に機能したが、多くのデマも飛び交った。3月下旬、ソフトバンクの孫正義会長までもが「日本医師会が福島第1原発の50キロ以内には立ち入らないように勧告した」との誤った情報をリツイート(転送)し、同じツイッター上で訂正、陳謝した。孫会長には約110万人ものフォロワー(読者)がおり、その影響力はマスメディア並みに大きくなっている。

 ◇問題点抱える情報発信の世界
 情報技術の進展で、個人が直接世界に発信できるようになったが故だ。この流れは社会を変えるのではないか。そう考え、2月に「情報デモクラシー2011 ウィキリークスのある社会」を連載した。第1部として内部告発サイト・ウィキリークス(WL)を取り上げたのは、象徴的だと思ったからだ。その功罪をどう見るべきか--取材中、常に頭にあった問いを、もう一度整理して考えてみたい。

 昨年、日本で流出した警視庁などの国際テロ捜査に関する文書は、私もインターネットで簡単に入手できた。秘密のベールに包まれていた公安警察の活動の一端が明らかになった意味はあろう。だが、一読して感じたのは情報を暴露された人たちの「痛み」だ。情報収集対象の外国人や日本人、テロ対策捜査員らの顔写真や住所、氏名、生年月日、学歴や健康状態が記された文書もあり、一部は家族の名前や年齢もさらされた。

 ウィキリークスも同様の問題を指摘された。米国に情報提供していたアフガニスタン人の氏名を含む文書を公表したことに対し、ウィキリークスを表彰したこともある国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは「アフガン人の命を危険にさらす」と抗議した。自由に情報を流すことが、人々の自由を奪うことになるとしたら、本末転倒というしかない。

 ウィキリークス内部でも議論はあった模様だ。元幹部ダニエル・ドムシャイトベルク氏が2月に出版した「InsideWikiLeaks」(邦訳は文芸春秋刊)によると、09年に米上院議員の支持者名簿を公表した際、創設者のジュリアン・アサンジ容疑者(39)=英警察が性犯罪容疑で逮捕・保釈中=は、付記されたクレジットカード番号の公開も主張したが、ドムシャイトベルク氏は「リスクが大きすぎる」と反論。結局、最後のけたを黒塗りにした。

 とはいえ、ウィキリークスが体現するのは「すべて公開」の思想であり、これを支持する人は増えている。それは既存メディアへの不信と表裏一体でもあり、謙虚に受け止めなければならないと思う。

 自分の経験を振り返れば、情報の回路が多様化しているにもかかわらず、かつてのように当事者の発信する「1次情報」を独占している感覚のまま仕事をしていなかったかという反省はある。多くの1次情報がネットに出回ることを改めて認識する必要があるし、情報の流れが多様であるのはいいことだと思う。

 ◇好みの情報だけを選択できる
 同時に、ネットには、好みの情報だけを選択できるという特性もある。米国の憲法学者、キャス・サンスティーン氏(現オバマ政権高官)は著書「インターネットは民主主義の敵か」(毎日新聞社)で、この傾向が進むと、人々は自分の耳に心地よい情報ばかりを交換し「連れ立って極端な立場に向かいがち」になると懸念する。マスメディアには、自分から求めない情報や意見との「思いがけない出会い」をもたらす機能があり、社会の分裂や過激主義の抑止になると同氏は指摘する。

 情報量激増の問題もある。総務省によると、08年度に国内でネット上に流通した情報量は01年度の約50倍。情報を整理し、本質を取り出す報道の重要性は増しており、報道の質がより厳しく問われる。

 ◇安易な書き込み 危険招く恐れも
 一方、個人も大きな力を手にしていることを自覚する必要がある。熊本市で3月に起きた女児殺害・遺棄事件では、事件が公になる前に「女の子が誘拐されたそうです」と、警察への情報提供を呼びかける書き込みがツイッターで広まった。善意とは思うが、被害者の安否も不明の段階で不特定多数に伝えると、捜査が始まったことを犯人に知らせるおそれがあり、被害者の命を危うくしかねない。

 その情報を出すことで、誰かを危険にさらしたり傷つけたりすることはないか。根拠のはっきりしない情報で人々を混乱させないか。細心の注意が必要だ。メディア、個人ともに、情報発信への自覚と責任が問われる時代だと思う。

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毎日新聞 2011年5月10日 2時20分

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2011.05.10 Tue l メディアリテラシー l top
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