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http://mainichi.jp/life/health/medical/news/20120220ddm013040002000c.html

エピテーゼ:体の欠損に 目元、鼻、指…人工ボディーで修復 心の傷の回復にも


 がんなどの病気や事故で失った体の一部を、人工的に作る「エピテーゼ」と呼ばれる方法がある。シリコーンで復元した人工ボディーで、修復が分からないほど自然な外見になる。患者が日常生活を取り戻し、心の傷の回復も期待できるという。【下桐実雅子】

 川崎市の元NEC社員、坂東幸一さん(71)は27歳の時、左目の奥に腫瘍が見つかった。左眼球のほか、目の周りの皮膚や組織を摘出した。以来、取り入れたのがエピテーゼ。上下まぶたなど目元周りを再現したエピテーゼを医療用の接着剤で顔に張り付け、中に義眼をはめ込んでいる。

 当初は外れないか心配だったが、加工技術の進歩とともに、付け心地が良くなった。毎日接着剤で付け直すが、寝る時も取り外す必要を感じず、「なくてはならない体の一部」という。

 坂東さんは左目の視力を失ったが、摘出手術前とほぼ変わらない生活を送ってきた。62歳で退職後も、電気通信大(東京都調布市)の大学院に入り、博士号を取得した。「人生の後半を楽しく過ごせるのも、エピテーゼのおかげ」と語る。

 昨年12月には米国で開かれた国際学会で、情報システム関連の研究成果を英語で発表した。渡米前には、約10年ぶりにエピテーゼを新調。「海外の学会で発表するのが目標だった。会場の聴衆は私が装着しているとはだれも気づかなかったと思う」とほほえむ。

      *

 エピテーゼは欠損した組織の代わりに体表面に装着する人工物で、義足などが機能回復を目指すのに対し、外見を整えるのが主な目的だ。1970年代、海外で技術を学んだ医療関係者らによって研究が始まり、現在は一部の大学や病院、民間企業が手がけている。

 エピテーゼの製作会社「アヘッド ラボラトリーズ」(東京都中央区)には、先天性の病気やがん、事故で体の一部を失った人たちが全国から相談に訪れる。患者の要望に応じて、目の周辺の眼窩(がんか)部をはじめ、鼻、耳、指、乳房などさまざまな部位を製作する。

 歯科技工士でもある常国剛史社長は「患部をガーゼで覆っている人が多く、他人の目を気にして家に閉じこもりがちになる。欧米では、エピテーゼを装着し社会復帰するまでが治療という考え方があるが、日本ではまだ認知度は低い」と話す。

 同社は94年に創業。製作はすべて手作業だ。蝋(ろう)を成形し、表面の皮膚部分を彫刻しながら、失われた部分を精密に復元していく。石こうで鋳型を作り、患者の肌の色に合わせたシリコーンを流して固める。仕上げに着色し、皮膚のしみやしわまで再現して、まつげやまゆげも1本ずつ植えていく。

 本来の皮膚と境界線ができるため、顔の場合はメガネをかけたり、化粧で目立たなくする。耳であればマスクを掛けられたり、音を集めやすく聞こえが良くなったりという利点もある。

 同社でエピテーゼを製作する杉田真梨さんは、利用者でもある。約10年前に事故で左手の小指の先を切断し、病院の形成外科で同社を紹介された。「ばんそうこうで隠していたが、人に会うたびに『どうしたの?』と聞かれるのがわずらわしかった。出来上がった指をはめた瞬間、自分の指が戻ってきたと感じた」

 人工物を付けることに戸惑う人も多く、希望に近づけるように話し合いながら製作するという。やけどで足の指をなくした女性は「成人式で草履をはきたい」といい、足先のエピテーゼを作った。「縄跳びがしたい」という5歳の女の子には、縄跳びが持てるような形の手に工夫した。

 価格は部位や大きさによって異なるが、顔面の一部で数十万円(スペアを含む3セット)。健康保険の適用はなく、自己負担になる。

 エピテーゼの保険適用を巡っては、厚生労働省の「先進医療専門家会議」が可否を検討してきた。しかし「症例数が増えていない」とされ、1月27日の「中央社会保険医療協議会」で検討対象からの削除が了承された。

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 国立がん研究センター東病院(千葉県柏市)頭頸(とうけい)部腫瘍科・形成外科の桜庭実副科長は、がんで切除された部位の再建手術を行っている。だが、別の部位の皮膚や筋肉を使うため、患者の負担が大きくなることがあり、この場合はエピテーゼを患者に紹介しているという。

 桜庭さんは「特に目の周りは、再建手術よりもエピテーゼの方が仕上がりが良い。顔面や乳房を再建することは、生きていく上で必須ではないが、患者の生活の質を改善するのにメリットが大きい」と話した。

 ◇学会が国産の材料開発へ

 日本顎(がく)顔面補綴(ほてつ)学会は昨年、エピテーゼ用の国産シリコーン材の開発に乗り出した。メーカーに試作してもらい、会員の病院で使い勝手などを検証している。製品化を目指し、国の薬事法上の承認も得たいという。

 同学会はウェブサイトで、全国の認定医約120人の一覧を掲載している(http://square.umin.ac.jp/jamfp/pdf/meibo.pdf)。「顔面補綴」と記載されている医療施設がエピテーゼに対応しているという。

 学会理事長の石上友彦・日大教授(歯科補綴学)は「手術の後、自分の顔を見て自殺を考えるほどショックを受ける人もいる。外見だけでなく、しゃべりにくい、食べにくいなどの問題を抱える人も、一人で悩まずに相談してほしい」と呼びかけている。



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毎日新聞 2012年2月20日 東京朝刊


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2012.02.22 Wed l 歯科技工 l top
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