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急接近:坂本すがさん 大震災の対応で感じた看護職の課題とは?
 <KEY PERSON INTERVIEW>

 全国の看護師や保健師などで組織する日本看護協会(東京都渋谷区)が、東日本大震災被災地での支援活動を続けている。未曽有の災害から得た教訓は何か。そして看護師不足などに対する考えは。6月に就任した坂本すが会長に聞いた。【聞き手・佐々木洋】

 ◇心のケアの支援も必要--日本看護協会会長・坂本すがさん(62)
 --東日本大震災ではどんな対応を取ったのですか。

 ◆ 大震災が発生した3月11日の夕方に対策本部を設置し、すぐに人を出そうと、災害支援ナースの派遣を募りました。災害支援ナースは被災地で医療や看護を提供する研修を受けた看護師で、全国で約4800人が登録しています。それぞれが職場から休暇を取って3泊4日程度で参加する無償ボランティアです。鉄道が使えないのでバスを手配し、3月22日に宮城県内の避難所などに第1陣約20人を出し、これまでに岩手、宮城、福島の3県に延べ約3800人を派遣しています。

 --現地で感じた課題は。

 ◆ 医療だけでなく、被災者の生活面から見ていかないと実態をつかめないと感じました。けがや病気の治療に当たるのは当然ですが、被災地を訪ねると、避難所で大半の時間を寝て過ごしている高齢者が大勢いることに気づきます。話を聞くと、掛かり付け医がいない、合併症で体が動かない、心のダメージを受けているなど、いろいろな側面が見えてきます。相談に乗り、心のケアも行っていくには保健師も含めた看護職が前面に立たないといけない。そのためには、短期的な支援だけでなく、看護職が現地で生活しながら被災者の生活と医療をみていく仕組みを作らないといけない。津波で病院や診療所が流された地域に訪問看護ステーションを設置することなどを厚生労働省に提案しました。

 --震災による死亡や職場を失った会員も多いと聞きます。

 ◆ 日本看護協会は看護師、准看護師、保健師、助産師の4職種で構成されています。被災3県の会員の被災状況を調べていますが、6月2日時点で死亡・行方不明者は18人。津波で病院や診療所が流されたり、原発事故に伴う避難などで退・休職に追い込まれた人は約200人に上ります。他にも津波で看護師免許が流されたり、給料未払いになったなどさまざまな問題が起きているので、会員向けQ&Aを作成し、支援しています。全国で看護師が十分に足りている地域はほとんどないが、被災3県は以前から医師も看護師も少ない。自治体やハローワークとも協力し、なるべく早く仕事に戻れる体制を整えたい。

 ◇年10万人退職変えたい
 --看護師不足は震災前から大きな問題になっていますが、その背景には過酷な労働環境があると指摘されています。

 ◆ 病院勤務の看護職員は08年末時点で87万人。09年は新卒で4万7000人採用し、再就業者も8万人いましたが、1年間で約10万5000人も離職し約2万人しか増えなかった。離職率は11・2%に上り、大量採用・大量退職の悪循環が続いています。長時間労働や休暇が取れないといった職場環境の問題が大きい。3交代制勤務をしている病院看護師の半分が月9回以上の夜勤をこなし、ほとんど仮眠を取れないまま日勤から深夜勤に入っている場合も多い。08年に大阪高裁であった過労死裁判の判決に照らせば、夜勤に加えて超過勤務が月60時間を超え過労死危険レベルにある看護師は23人に1人、全国では約2万人がこのような過酷な状態で働いています。看護師が年間10万人以上も辞めていく現状は何としても変えなければならず、最優先課題として取り組みます。

 --具体的な対策は。

 ◆ 患者の命に関わる業務を少ない人員で行っている。夜勤と長時間勤務を改善しなければならない。協会として交代制勤務のガイドラインを策定中です。勤務間隔は最低12時間、夜勤は最長12時間までとするたたき台を作りました。労働基準法には医療従事者の夜勤や交代制勤務の規制がない。国が具体的な改善目標を示した上で監督指導を行い、診療報酬算定要件に反映させることが必要です。厚労省にこれらの対策のほか、都道府県ごとの看護職雇用の質改善支援窓口の開設などを要望しています。厚労省が6月に都道府県に出した通知では、シフトを作成する労働時間管理者の明確化を医療機関に求めた上で、労働局が労働時間設定改善コンサルタントの支援を実施するとしており、高く評価できます。

 --従来の看護業務より高度な医療行為を行う特定看護師(仮称)の導入の検討が進められています。協会の対応は。

 ◆ 超高齢多死社会で、少ない人数で多くのお年寄りなどを支えていくには看護師の業務拡大は不可欠。例えば、手術後に患者の人工呼吸器の挿管チューブを抜くことは医療行為に当たり医師にしかできません。一般病棟に移れる状態になっても、医師が手術中のためチューブを抜くのが予定よりも遅れてしまうことがよくありました。医師の指示を受けた特定看護師が行えるようにすれば、早く家族に会ったり、早く歩くことができます。在宅療養や老健施設などの患者の薬の選択なども特定看護師の活躍が期待できる分野です。国民のニーズがあり、安全を担保した上で実施できる行為なら積極的に引き受けたい。

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 ■ことば

 ◇特定看護師
 医療の質向上や医師の負担軽減のため厚生労働省が導入を検討している。専門カリキュラムを持つ大学院で学び、第三者機関が認定。従来の看護業務より高度な医療行為を行う。具体的には傷口の縫合や超音波検査の実施、薬剤の選択などが想定されている。

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 ■人物略歴

 ◇さかもと・すが
 和歌山県立高等看護学院卒。同県立医大付属病院、関東逓信病院(現NTT東日本関東病院)看護部長などを経て埼玉大大学院経済科学研究科博士後期課程修了(博士)。11年6月から現職。

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毎日新聞 2011年7月9日 東京朝刊

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2011.07.09 Sat l 看護 l top
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